一方で青年が走り回り。
 もう一方で一台の機械が唸りをあげた。

 

File 1 :[異端な放浪者]-07

 

「失礼。この辺りでこんな奴を見かけませんでしたか?」
 通信機をつけ、赤茶けた髪の青年が通りがかった夫人に向けて一言。片手には砂で痛んだ紙が一枚。
「いいえ」
「そうですか。ご協力、感謝します」
 ビッと敬礼し、何かを探すように辺りを見回しては通信機に向けて喋る。
 その耳元で、明るげな少女のような声が響いた。
『あーっ! 隊長ぉー!』
「……っ、どうした!」
 あまりの大音量にキィーン、と耳鳴りがするも、赤茶の髪の青年が答える。
『正面、第一区画正門方向に目標を発見。しかし一人。追うっすか? 面倒くさいけど』
 今度は別の女性の声だった。しかし声には気だるげな雰囲気が含まれている上、ふあぁぁぁ〜、と、あくびらしきものまで聞こえてきた。
「面倒くさいとか言うな! 別々に逃げたのか……まあいい。一人だろうが逃げすな。総員、ただちに正門へ向かえ! 目標を発見! 繰り返す。総員、ただちに正門へ向かえ!」
 赤茶の髪の青年───隊長と呼ばれた彼は正門方向へ向かいながら弾丸を装填する。そこへまた別の声が聞こえた。
『目標を確認。隊長、逃走を図っているようです』
「なんだと?」
『はい。中型バイクを確認。恐らく近辺の住人のものと思われます。狙撃、許可しますか?』
『許可しますかぁー?』
「きょ……副隊長を除いて許可、だ」
『了解』
『えー! 隊長ぉー、それって、えこひいきですかー?』
「お前は何も考えないで撃つからだ! 一般市民を巻き込んだらどうする!」
『えこひいき〜。ね、ミューちゃん、えこひいきだよね〜』
  幼さを含んだ声が抗議するが、隊長の彼は断固として許さない。
 ミューちゃん、と呼ばれたのに答えるかのように、あの気だるげな声が聞こえる。
『面倒くさいから別にいいけど』
「お前、少しは緊張感ないのか……」
 走りながら隊長は、がくっ、と項垂れた。そこへまた別の声。
『隊長、ふざけてる場合ではありません!』
「別に俺がふざけてるわけでは」
『目標、応戦してきました! 今のところ被害は出ていませんが、このままだと危険です!』
「何? よし、二手に分かれろ。片方はただちに市民の保護に回れ。もう片方はそのまま目標を追え。足止めだ」
『了解』
『ほ〜ら隊長、わたしたちにも許可したほうがいいんじゃないですかぁ?』
「今そっちに向かってるから待て! とにかく待て! これは待機命令だ」
『ぶーぶー』
「ブーイングしたって撤回しないぞ」
 そのまま彼は正門へ向かう。

 

 ───警備隊が動き出すよりも数分前。
「ほ、本当に大丈夫なんだろうな?」
 リーザスは少々小さいサイドカーに乗り込みながら灰色の髪の青年、フォルスに問う。
「おいおい、自分で直したのに自信なさげだな〜」
「バイクのことじゃねえよ。逃げられるかどうかの心配だって」
「大丈夫! なにせおれの分析だ。狂いはなし!」
「どこからその自信が来るかな」
 えっへん。
 あまりにも大げさに胸を張るフォルスに対し、リーザスは小さくなったまま遠い目をする。一人は堂々としながら不敵な笑みを浮かべ、もう一人は縮こまっている(おまけにリーザスの入っているサイドカーは、見た目が箱のようなもので、中は狭い・小さい・暗いときた)。まるで、いじめっ子といじめられっ子のような感じで、端から見たら「何やってんだこいつら」と言いたくなる光景だ。実際、その場に居合わせていた『犯罪者』ことケイルはそう思っていた。
「おい」
「ん? ああ、運転の仕方ね。よーしよし、任せなさい」
 あははは〜、と意味もなく笑いながら、フォルスはケイルに『ウィアロ』の機能について教え始めた。端───と、言っても、小さいサイドカーの中───では、リーザスが腕組みをしながらぶつくさと何か呟いている。
「ったく、なんでオレがこうして縮こまって入ってなきゃいけないんだか……荷物用のサイドカーだってのに狭えし。運転の仕方ならオレが分かってるってのに、どうして上手くいかないんだ? つーか今日って全部上手くいってねーよな。厄日だ厄日! ぜ────ったい、厄日だ! 石降ってくるわ、人降ってくるわ、逆に自分が降り落ちるはめになるわ、挙げ句に共犯者だぁ……? ……あぁー! もう! なんだよ! これで『今日の運勢は最高です』とか占いでぬかしてたらキレるぞマジで! 訴える、確実に訴える!」
 文句だった。もう、苛立ちすぎて、どうでもいいことにまで当たっている気がするが。特にリーザスの同僚がいたら突っ込むだろう。「お前は占い、見てないし信じてないだろ」と。

 しかし、ここで重大なことが発覚した。

 ケイルは先ほどからフォルスの手ほどきを受けて、操作の仕方を覚えている。よく考えると、その事自体がおかしいのだ。バイクの操作なんてものは、免許を取った時に覚えるものだ、と。
 特に『ウィアロ』は燃料が水と電気、基本的なコンピュータ機能が搭載されているくらいで、他のバイクと何ら変わりない。
 ……おかしいな。
 嫌な予感がして思わず尋ねる。
「おい。聞くが、お前、免許は? 運転した事は?」
「ねえよ」
 ケイルが操作の手順を確認しながら、さらりと答えてみせた。
「はあ。持ってないとな。運転した事も、お?」
 ───はい、嫌な予感が的中しましたー。
 そんな言葉がリーザスの頭の中を通り過ぎていった。
「運転した事もないとな!? い! い、いいいや、待て! それに無免許かよ!」
「とってるように見えるか?」
 確かに。つい最近仕事が軌道に乗り出してきたばかりの元放浪者───おまけに今じゃ犯罪者───が、そう易々と免許がとれるだろうか。いや、難しい。
 ───当たり前だろが。
 ───当たり前じゃねーよ。
 視線だけでそんな会話をすると(心が通じてるという訳ではない。お互いに突っ込みたい事を考えただけだ)ケイルは身構える。
「とりあえず、乗れるだけマシだと思え」
「まー、マシってかー、そういう問題じゃー……だいじょーぶなんですかね、その辺り」
「さあな」
「『さあな』って!」
 そして予告無しに、エンジンを吹かした。
 ちなみにサイドカーに無理矢理乗っているリーザスには、運転する様子は僅かに見えていても、身体が動かないために手出しが出来ない。
「ちょっ、待て待て待て、大丈夫かホントに!?」
「こんなもん、適当に運転しときゃいいだろ」
「よくないっつの!」
「んー。不安なら、そこんところはフォローしとったらどうですかね」
 相変わらず定まらない口調で、フォルスが横から言う。
「無責任だよ、持ち主! 万が一もしもの事があって壊れてもいいのか!」
「その時は修理も任せるわ。後で苦労したくなかったら、壊さないように頼むぞ、お荷物君」
 言いながら敬礼。ぴっと右手を横にして額に持ってくる。おいおい、と心の中で言いつつ、リーザスが叫ぶ。
「お気楽だー! しかも荷物ネタ引っ張るな! もう置いとけよ、そんな過去のネタ!」
「人間、時には過去を振り返ってみたくなるものさ。あはははは」
「良い事言ってるようで言ってないぞ!」
「さあさあ、血管切らしてる場合じゃないぞー。とりあえず行かんとヤバイんじゃないかい? きみたち」
 へらへらと笑ったまま、フォルスが外を指差す。彼の言葉にはっとしてリーザスは「そうだった」と呟き、ケイルは不機嫌そうな表情を浮かべながら毒づいた。
「話が長ぇんだよ」
「うーん、否定出来ないねー」
 締まりのない返事をして、フォルスがひらひらと手を振る。
「じゃ、いってらっしゃい」
「待ってくれ。オレは一体どうなる」
 ケイルにフォルス。双方ともリーザスの言葉を無視。
 そのまま『ウィアロ』が前進。徐々に加速がつきはじめる。
「げ! ちょ、ちょおぉぉっと、フォル、ヘルプっ……あだっ!」
 ガン!
 そんな小気味いい音とともに、体勢を崩して、サイドカーの端に額を打つ。

 ───唸りをあげ、『ウィアロ』は飛び出した。

 遠くから叫び声のようなものが聞こえてくるが、フォルスは「ははは、健闘を祈るぞー」と手を振るだけだった。
「さあて、どうなることかねぇ」
 フォルスは頭の後ろで腕組みをして、いつものへらへらとした笑みを浮かべながら彼らの去っていった方を見た。だが、ふと、笑みが消える。
「傍観者は傍観者らしく、成り行きを見守るしかない。か」
 ふむ。納得したような声を上げて、顎に手を当てた。
「まあ、あれだな。昔のようにしてろってことだろうな」
 愛車の『ウィアロ』の去っていった方を見続ける。顔つきが少し鋭くなり、細めているせいか、眼の色が本来のアイスブルーよりも濃くなって見えた。
「───“諦めるな。ありふれた言葉だが、君たちの未来は、君たち自身にかかっている。地に産み落とされる前から決定付けられている運命に、どこまで抗うことが出来るのか。傍観者と化した者は、傍観者らしく行く末を見守ろう。あとは僅かばかりの手助けをするだけさ”───ってか。あははは!」
 そう言って彼は再び頭の後ろで腕組みをして、家の中に戻っていった。

 

 で、彼らはどうなったかと言うと。
「くっそおぉぉぉ〜……今日、石難じゃなくて、車難まで……マジで厄日だ、このやろー!」
 と、リーザスが叫んでいた。
 ケイルは、大分荒いが、運転した事が無い割には乗りこなしている。
 フォルスの家を飛び出した彼らは、そのまま正門に向かって走り出していた。ただ、先ほどから警備隊に見つかって発砲され続けている。一発程車体に撃ち込まれはしたが、器用にもケイルは避けつつ応戦していた。
「酔う酔う、吐く吐く吐く、ちょっとっま……」
 うぅ、と、顔を青くしているリーザスはサイドカーの入り口(?)から少し顔を出し、後ろを見た。
 しかし、その瞬間に甲高い音と共に何かが顔を掠めた。
「ん?」
 頬に手をやる───なんか、濡れてんですけど───血だった。
 確認した途端、ツゥーと、一筋の血が頬を伝った。
「あ、ああああ、ヤベヤベヤベ、ヤベェってぇぇ」
 先ほどよりもさらに顔を青ざめさせ、サイドカーの中に引っ込む事にした。
 リーザスの行動も知らず、運転しているケイル自身も頬から血を流していた。間一髪で避けたものの、下手をすればもろに当たっていただろう。
「ったく、ここの奴らは手加減知らねえのか?」
 ぼやきつつ、彼自身も銃を撃っていた。
 ───あと二発か。
 残っている弾丸の量を確認し、予備弾丸を手に入れておくんだったと後悔しつつ、前に向き直ってスピードをあげる。
 出入り口まではもう少しだ。それまでに振り切れればいいが、向こうにまで乗り物に乗ってこられたら、荒野に出てからもきっと追われる羽目になる。その事態は避けたかった。とりあえずはこちらを見失わせる事が先決だろう。
 だが、どうするか。ケイルが考えていた矢先、屋台が目に入る。
 ───そう言えば、今は市が開かれてるんだったな───
 と、警備隊を撒ける方法に気がついて、まだ数十メートルほど先の屋台の柱に向かう。どこかで悪いと思いつつ、利用させてもらうことにした。
 そして『ウィアロ』を少しずつ減速させる。

 

 減速し始めたバイクを目にして、ふと、おかしいなと思った。しかし躊躇している暇はない。こちらは走っている以上、今のうちに少しでも追い付かなければいけない。
 ……何も問題なければいいが。
 何故そう思ったのか。それは傍らにいる副隊長の少女のせいだった。先ほどから無邪気な笑みを浮かべている。それならば何ら問題はないだろう。ただ、その腕に抱えているのはマシンガン。ついでに先ほどから撃ちまくっている。
 ああ、これほど銃を持たせるのが恐ろしい人物はいるだろうか。
 この副隊長の『ルチル』は、暴走癖があった。普段ならばただの天然娘、と言う事で済むのだが、一度銃を持たせたら大変。あっという間に無邪気に笑いながら銃を打ちまくる天然暴走娘へと変貌する。手加減容赦一切無し。
 先ほどからの会話も
「止めろ!」
「いやでーす」
「止めろって!」
「だめでーす」
「止めろって言ってるだろ!」
「いやったらいやでーす!」
 ……の繰り返しだ。
 もう一人の副隊長『ミュライル』の方を見るが、彼女は超のつくほどマイペース。
 彼女にも止めるように指示したが
「おい、なんか言ってやってくれ」
「自分は関係ないっす」
 と言って、犯罪者を追っている。
 そして三人目。隊員の『ダイ』は、体術に優れていて一見問題無し。だが銃を扱った事が無い。
「隊長、オレは撃っていいんですか? 撃ちますよ?」
「いや、撃たなくていい」
「でも」
「撃たなくていい」
「けど」
「撃たなくていいって!」
 この通り、本人はやる気があるが、一度撃たせたら、それこそ第二の暴走人物と化しそうで怖い。
 最後の隊員『ラング』は、本来は刀使いだが、銃も充分扱える。年上と言う事もあって、一番頼りがいのありそうな人物だった。ただ、睡眠癖がある。本人の特技も『立ったまま眠る事』だ。ちなみに今は追いかけているものの、今にも眠ってこけそうになっているのを見てしまった。
「ちょっとラングさーん! 眠らないでください!」
「大丈夫だ。起きて……い……」
「言葉途切れましたよ!? 眠ったらこけますよー! おーい!?」
「隊長、うるさいっす」
 最後にミュライルのぼそりとした文句が入った。
 まあ、何と言うか、副隊長だけじゃなくて───今現在この場にいる全員が、問題ありだ。
 他にもメンバーはいる事はいるのだが、現在は別の方面へ向かっている。
 何でこのメンバーがガードになったんだろうなぁ。と、片隅で考えながら前を見た。
 すると、追っている相手が止まっていた。

 

 ケイルは先ほど目を付けた屋台の傍にくると、一度『ウィアロ』を止めた。
「え? おい、何やってんだ?」
 止まった事に気がついたリーザスがサイドカーから顔を出した。ケイルは傍に積んであった箱に足をかけている。
「ああ、まさか」
「こういうことだ」
 ガン、と箱を一蹴りした。
 中には果物が入っていたらしい。箱から飛び出てころころと転がり、 それに驚いた警備隊員が思わず止まる。なおも転がってくるそれを相手に、どうしたらいいのか困っているようだ。
 その様子も確認せず、一気に『ウィアロ』を加速させた。
「なるほど」
 リーザスが少しだけ感心したような声を上げる。
 そのまま彼らは、荒野へと向かって飛び出す。

 

「隊長ぉー、たっくさん転がってきましたねー」
「ああ、そうだな!」
 無惨にも割れた果実を眺め、副隊長ルチルの暢気な声を聞いて、隊長は怒りぎみに答えた。
 メンバーについて考え、少し呆然としていたせいで彼だけが見事に転がってきた果物を踏んでこけたのだ。おまけに追っていた相手の姿が見えない。
「取り逃がしたぁ〜……!」
 本当に悔しげに呟き、拳を作って地面を殴る。
「ま、たーいちょっ。そうそう上手くいかないですって」
 えへ。と、ルチルが笑う。
「ってわけで、いなくなっちゃったし、これ、撃ちつくしていいですかぁー?」
「何が『ってわけで』だ! 何が!」
 マシンガンを抱えて聞いてくるルチルに向かって、立ち上がりながら怒鳴った。そんな彼に向かって、もう一人の副隊長ミュライルが一言。
「自分で転んだ挙げ句、八つ当たりって、なさけないっすねえ」
 ガーン。と、音が聞こえた気がした。
「や、八つ当たりしたつもりはないが……?」
「おまけに踏んでこけるって、どこぞの漫画っすか。バナナの皮じゃないだけマシっすけど」
 ガーン。と、また一つ音が聞こえた気がした。
「たいちょー、気を落としちゃだめですよー?」
 ルチルがぽん、と肩に手を置く。
「そりゃあ」
 ただし。
「いまどき、転がってきたもの踏んで、転ぶ人って、あんまりいませんしー」
「う」
「特に意気込んでたからー、なさけないって言ったらなさけないー」
「うっ」
「しかも取り逃がしましたぁー」
「ううっ」
「なんて言うかー、典型的な脇役のやることですよねー」
「うう……」
「落ち込んでるしー。これってなんて言うんでしょー? あ。ヘタレってやつでしたっけー?」
 トドメ。
 特に最後の一言が応えたらしい。彼は俯いて、頭を抱え出した。
「な、なんで、なんでこのメンツで俺がダメ出し食らってるんだ !? むしろ『ヘタレ』なんてどこから聞いた……!」
「ゼン隊長、へこたれちゃおしまいです」
 隊員ダイの励ましが後ろから聞こえる。と、ふと思ったことがあった。
「こ、転んだのは俺自身の不注意のせいだ。それは認めよう……ただ、な」
「ただー?」
「どうして、お前らは追わないんだ? お前らまで止まる事はないだろう!」
「あ」
 ルチルは思い出したように声を上げた。隊長───ゼンは、ぎこちない動きで彼女の方を見る。目が合うと彼女は誤魔化すように「てへっ」と笑っていた。もう、彼女に対しては何を言っても無駄な事は分かっているので、ただ溜め息をつく。その途端。反対側からミュライルの声が聞こえてきた。
「ほら、隊員は、隊長命令がないと動けないじゃないっすか」
「無茶苦茶な言い訳するな! お前の場合は面倒くさがっただけだろ、サボリ魔!」
「ヘタレに言われたくないっす」
 さらりと言いきったミュライル。それとほぼ同時に「ガーン」と、本日三回目の音が聞こえた。
「お、おま……お前か、ルチルに教えたのは……!」
「何ですか、ヘ・タ・レ」
 先ほどの『サボリ魔』発言に怒っているのか。ミュライルはわざとらしく「ヘタレ」の部分を強調する。彼女の発言に思わず額に手を当てて口元を引きつらせた。
「ちょっ、待っ……お前さっきから」
「ヘーターレー」
 本日二度目のトドメだった。ミュライルがどこか怨みがましく無表情で言った言葉に、思わずよろめいた。そして額に当てていた手を顔の横へ持って来て宣言する。
「……も、もう……もう疲れた……俺は、疲れた……あとを頼むぞー……」
「隊長ぉー!?」
 言い残して彼はバッタリと倒れてしまった。だが、動揺しているのは隊員ダイ一人だけ。
「あ。貧血起こした」
 隊長を倒した張本人であるミュライルの冷静な一言だけが、虚しくも大通りに響き渡っていた。

 

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