───君は神を、魔を信じるか?
今の世のは、人間の手で作り出された建物が溢れ、人々はなに不自由ない生活を送っている。
この世に起こりうろうとしている災厄には、何も気がつかずに。
そして、ごく普通に暮らしていたある少年が、その災厄に巻き込まれはじめる。
それは少年がある事に気がついてから始まる。
第1話「俺だけが」
「聖、帰ろうぜ」
「了解!」
ここは、東京都内にある高校の一つ。その玄関から俺は走りながら出た。
吾妻 聖(あがつま ひじり)・十七才。今年、高校二年生になったばかり。
「ったく。お前は授業終わったとたんに急に元気になるんだな」
そう言った奴は俺の幼い頃からの親友、赤城 修(あかぎ しゅう)だ。
修はクラスの中では、一、二を争うくらい頭がいい。かと言って、ガリ勉と言うわけではない。
運動神経も俺から見るとなかなかのもの。
顔も結構カッコイイ(らしいよ。俺に聞かれてもよく分かんねーし)ので、女子の中では評判がいい。
「だっーて。やっと勉強から解放されるかと思うとねぇ〜。じゃ、何? お前は勉強好きなわけ?」
「それは無いけど……」
「ほーらほら! 人のこと言えねーじゃん! ん? モテ男、修君」
俺が指差しながら、からかうように言うと修は「やめろ、バカ」と言って右手に持っていた鞄で俺の頭を思いっきり叩いた。これはちょっと予想外。いつもならすぐに避けてやるんだが、今日だけは避けられずにそのまま見事クリーンヒット。
これが結構痛い。運悪く金具部分が当たってしまったらしい。思わず頭を抱えてうずくまった。
「この……! くっそ、マジ痛ぇ……」
「わ、悪い! 大丈夫か?」
修が心配げに顔を覗き込む。そんな修の様子を見て、俺が一言。
「……照れ隠しか? さっきの」
「……今度は首絞めてやろうか?」
修が表情を一変させて(笑みが黒いです)そんな言葉を言ったので「いえ、丁重にお断りさせていただきます!」と言いながら、俺は慌てて頭を振った。
頭を抑えながら立ち上がって「それにしてもまだ痛ぇよ、さっきの鞄攻撃…」と言いかけたが、後が怖そうなので止めておいた。
黙ったまま歩き出したが、前を見ていなかったせいで、今度は自転車に乗ってる奴と派手にぶつかった。
次に。
俺達が校門から出かかったとき、後ろから「わぁ!」と言いながら、俺の背中を押した奴がいた。
「わぁ!?」
俺は驚いてくるりと体の向きを変えると、後ろには見慣れた姿の女子がいる。
何か言おうとしたが、俺は押された衝撃がまだ残っていて、バランスを崩して学校の庭木に思いきりぶつかった。
「……何してんの」
「お前のせいだ、お前の!」
立ち上がり、頭に乗っかっている葉をほろいながら返事をした。
「まさかこんなベタな展開になると思ってなかったんだもん」
「お前な……」
もう、呆れて物が言えない(ってのがあってんのか? この状況。)俺は黙って歩き出した。
コイツは三隅 薫(みすみ かおる)。まぁ、コイツも修と同じで幼馴染みって所だ。
「あれ、薫、部活は?」
そう言えばそうだ。薫は美術部に入ってるはず。
こんな時間帯になぜここにいるのかと、今、修が言った一言で思った。
「休部。ホラ、今、悪性の風邪流行ってるでしょ? みんな、それにやられたみたい」
「なんだ。そう言う事か」
「俺はてっきり部活さぼったのかと思ったけど」
「アンタじゃあるまいし」
ズビシッ! と効果音が聞こえそうなくらいの鋭いツッコミ。
俺はそれに対して「部活やってるわけじゃねぇもん…」と言いかけた。
ところが後ろ向きに歩いていたので、歩道に転がってた石につまづいて転んだ。
恥ずかしい事に、下校中の奴らの注目の的となってしまった。
薫は目を丸くしてるし、修は「またか」とでも言いたげに微妙な笑いをしてみせた。
……今日は、厄日かもしれない……。
歩道を歩きながら、俺達は話をした。今考えたら、こうして三人そろったのは久しぶりだ。
「ねぇ、聖なんで部活やらないの?」
薫にそう言われて、少し返事に詰まったが、俺は答えた。
別に深い理由はない。けどはっきり言って面倒くさいのだ。
「お前、一年の時はすごかったよなー。色んな部から誘いがあってさ」
修が思い返すように言った。それに対し、クラスの違っていた薫はそれを知らない。
薫が「そうなの?」と言い、俺を指差しながら修が肯定する。
「そうなの。んで、全部断ってやんの、こいつ」
「うっわ〜……。微妙にカンジ悪くない?それ」
「ところが、そうでもないみたいなんだなぁ……」
修がそう言ったのを見て、俺はそっぽを向いた。なんと言うか、気まずい気分になったから。
確かに、頼まれて助っ人として出る事は度々ある。
その度にスカウトされかかって、断って……本当、なんでこんな風になったんだろうな。
「そういえば、修もなんで部活やってないの?」
「んー……面倒くさいから」
修が薫に対し、にこやかに言った。
聞いた瞬間「コイツも、考えてることは俺と一緒なんだな」と、そっと心の中で納得しておいた。
……口に出したらどうなるか分かったもんじゃない!!そしてふと横を見ると、道路の向こう側に、ボウッ…と霞がかっているような人が見えた。
思わず「あ」と声を上げ、立ち止まる。
「どうした?」
修が尋ねてきたのに対し、俺は一言「いる」とだけ言った。
長い付き合いのせいか、それだけで修と薫は意味が分かったようだ。どうも俺は、小さい頃から“人には見えないもの”が見える体質らしい。
「良いの? それとも……」と薫が言ってきたが、俺もこれだけ離れてちゃ、判断はしにくい。
「ちょっと見てくる」
そう言って、近くにあった横断歩道に向かい、信号を確認して渡る。
今の時間帯にしてはめずらしく、人通りも、車の通りも少なかった。
そこを駆け足で渡る。
その時。丁度大型トラックが猛スピードで俺に向かって突っ込んできた。
「聖、危」
薫が、俺に向かって「危ない」。そう言いかけたところで言うのをやめた。
……いや、正確には言えなかった。
俺が気がついた時には、辺りは妙にシンとしていて……
一体何がおきたのか。俺は理解するのが大変だった。
上を見ると、空を飛んでる鳥は、同じ一点から動かない。
横ではさっきの大型トラックが、俺にぶつかるかどうかと言う距離で止まっていた。
走っている最中に弾いたらしい石も、妙な位置───空中で止まっていた。
そして後方の二人。 さっきからまばたきもせず、同じ表情でこちらを見ている。
今この空間で……動いているものは俺だけだった。
……理解しがたいが……これはどう見ても……
時間が止まってる……?
俺はとりあえずその場所から移動した。いつこの状況が元に戻るか分からなかったから。
確かに理解しがたいが、この状況になってくれたおかげで、俺が命拾いしたのは事実だ。でも……映画や漫画の世界じゃあるまいし、それに誰が止めたのか。
一体誰が……?と、さっき見かけたやつが、まだ同じ一点に立っていた。
まさか、こいつも止まってる? そう思った瞬間、そいつはこっちを向いた。白い衣装をまとっていて……死に装束なのだろうか? どんな服なのか分からないが……。
あと、髪は黒じゃない。染めているのか? ……まぁ、俺も染めてるしな。
歳も……俺と同じくらいか?そんな事を考えていると、突風が吹いて、思わず目を閉じた。
……目を開いたときには、最初に声が聞こえてきた。「ない!」と。
それと、もっと手前では車のエンジン音。
「……え?」
横を見るとトラックが通り過ぎ、それから向こう側の歩道で、修と薫が呆然とした顔をしていた。
さっきの俺と同じように、何がおきたのか分からない様子だ。
トラックのほうは、なにごともなかった様に、ずっと向こうへと行ってしまった。
「……何だ?」
修が目を丸くして、そう言っているのが聞こえた。
薫はと言うと、ただただ、動揺している。
仕方なく、俺は二人の元へと戻る。
こっち側に来た目的もなくなってしまった事だし。
「……なぁ、今……避けたのか?」修がそう言ってきた。
昔からの馴染みとは言え、さっきの出来事を話しても信じてもらえないだろう。
そう考えた俺はとりあえず「うん」と頷いておいた。
「避けたって。一瞬すぎて分かんなかった……」と薫。
そりゃあ分からないだろうな……。そう思った。
「そう言えば……さっきさ、赤信号だった……よな?」
確認するように俺は言った。修は「うん……まぁ……」とだけ言った。
「んじゃ、さっきの奴…俺の事ひいてくつもりだったのか?」
「いや……俺に聞かれても……あ、でも多分……」
「多分ってお前なぁ……ちっきしょ〜……。今度あったら覚えてろよ!」
俺はトラックが通り過ぎていった方向に向かって、ビシッとポーズをとって言った。
「……行こうぜ」
言いたい事だけ言ってから、俺はさっさと歩き出す。
「……さっきの人は?」と薫が言ってきたのを「いなくなった」の一言で返した。さっきの不思議な体験。あれは、誰にも言えない……そう思いながら。
アトガキ。天地…書いてリメって、またリメりました…。ごめんなさい…。(土下座
ヘタしたらまたリメるかも…(おい)展開早いかなー…。とか思ってたんで…気になって…。
これで前よりは話の流れのテンポ、ちょうどよく…なってきたのかな?(汗)…やっぱまだ早い気がする…。(滝汗
そしてサブタイトル…なんじゃこりゃ。(おい)一応、聖のこと…指してるつもりなんですが…あれ?(何だよ
…二話に続きます。(話そらすな!!